──まず、ANDROSOPHY様の設立の背景を教えていただけないでしょうか?
山田:ANDROSOPHYは、「私自身の育児経験」と「ビジネス」という2つの観点が立ち上げのきっかけになっています。まず、育児経験についてお話します。
私には現在4歳になる娘がいるのですが、彼女が生まれたとき、私は「土屋鞄製造所」で働いており、仕事の関係で香港に駐在していたんです。そのため育児を手伝うこともできず、娘とはSkype越しに顔を合わすだけ。日本に帰国するのも年に2〜3回でした。
娘が1歳の誕生日を迎えたタイミングで一時帰国できる機会があり、娘と直接顔を合わすことができたんです。直接会うのは2回目だったのですが、顔を合わせても娘がなかなか笑顔になってくれませんでした。お父さんを見ているというよりかは、知らないおじさんを見てるような顔をしていて。ただ、お母さんの顔を見るとすごい笑顔になるんです。
もちろん、物理的な距離があり育児ができていなかったことは理由としてあるのですが、それよりも私が大きく感じたのは、”父親”になりきれていなかったのではないかということです。お母さんは当たり前のように子どもと会話したり、子どもの笑顔を作ることができるのに、お父さんはどうしてそれが難しいのだろうか。そう思ったのが、ANDROSOPHY立ち上げのきっかけです。
実際、土屋鞄製造所で働く1〜2歳の子どもを持つお父さんたちと食事をしたとき、そのお父さんたちも自分と似たような課題感を持っていたんです。
一つ屋根の下にいても、子どもと毎日顔を合わせていても、お母さんには勝てない距離感がある。それによって、子どもとの距離感が少しずつ離れていき、会話できなかったり、笑顔がつくれなかったりすることがある、と言っていました。
そんな自分も含めた男性の育児における経験を踏まえ、何とか男性が率先して育児をする方法がないかを考えたときに、ANDROSOPHYの方向性が見えてきました。
──ビジネスに関してはいかがでしょうか?
ビジネスに関してですが、ANDROSOPHYは土屋鞄製造所のグループとして立ち上げたブランドです。だからこそ、土屋鞄製造所が持っている企業資産を生かす形でブランドの方向性は考えました。土屋鞄製造所がこれまでに作ってきたものは、『子どもの大事な勉強道具を運ぶ”ランドセル”』。最近は、大人向けの財布や鞄なども展開していますが、その背景には『大人のビジネスにおける大事なものを運ぶ』という考えがあります。
それを踏まえて、人間にとって最も大事な『運ぶもの』は何かを考えたときに、それは子供であり赤ちゃんだよね、というところに落ち着きました。鞄屋がつくる大事な赤ちゃんを運ぶもの、ということで抱っこ紐をANDROSOPHYというブランドを位置づけをする商品として作っていくことになりました。また抱っこ紐は子どもとの距離感もいいですし、子どもと良いコミュニケーションができるという考えもありました。
──高橋さんはいまのお話を聞いていかがですか?
高橋:先ほど山田さんが仰っていた「お母さんには勝てない距離感」というのは分かる気がします。自分も時々、ベッドで子どもと一緒に昼寝をしたり、私が子どもを寝かしつけたりするのですが、やはりお母さんには勝てないところもありました。
だからこそ、ANDROSOPHYさんの抱っこ紐を使って、1歳の娘が私の胸でスヤスヤと寝てくれたのは嬉しかったんですよね。お父さんと娘が一括り担っている感覚がありました。